青年ベートーヴェンとモーツァルト

今年2020年はベートーヴェン生誕250年ということで、楽聖(この言い方、古臭くて好きでないが)にまつわる話題を。

先日、日本を代表する女性ピアニストに話を聞く機会があった。彼女は来年の春にウィーンのプレイヤーたちとベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番ハ短調を弾く予定だ。この作品、作曲者33歳の時に完成&初演され、彼の本領が出始めたいわば若きベートーヴェンの出世作のひとつ。その15歳(!)でこの曲を弾いたという彼女は曲の魅力と演奏の醍醐味について大いに語ってくれたが、最後に興味深いことを付け加えた。

「第1楽章のカデンツァに、モーツァルトの同じハ短調のピアノ協奏曲の主題であるC-Es-As が出てくるんですよ。この曲、私は若いベートーヴェンがモーツァルトに捧げたオマージュだと考えています」

モーツァルトが書いた同じハ短調の作品(K.491)とベートーヴェンのくだんの作品の近似性と相違については昔から言われてきたことだが、ベートーヴェンを得意とする彼女自身の発言だけにリアリティを感じる。この2曲、世界観はまったく異なっているにしろ、青年ベートーヴェンがモーツァルトから創作のヒントをもらったのは間違いなさそうだ。

さて、もう一つ。

ベートーヴェン最初の交響曲である第1番ハ長調。ピアノ協奏曲第3番同様に、ベートーヴェンの本格的なデビュー作と言ってもいい。この作品もモーツァルトの「ジュピター」交響曲からの影響を言われることは多いのだが、最近、あることに気づいてしまった。

すでに指摘されていて、広く認知されているのかもしれないが、自分なりの発見(笑)ということでお許しを。で、何かいうと、交響曲第2番第2楽章アンダンテ・カンタービレ・コン・モトの旋律の主要音と、モーツァルト晩年の名作オペラ《魔笛》第2幕でのパパゲーノのアリア〈可愛い女の子か女房が欲しいもんだよ〉のそれとが、ほぼ一致してしまうのですよ。調性(ヘ長調)と音高も共通している。ベートーヴェンがパパゲーノのアリアを

シンフォニーの素材としている可能性はありそうだ。

これも青年ベートーヴェンのモーツァルトへのオマージュなのかな?

[参考CD]

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番 
アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)
指揮:サイモン・ラトル
管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(フィリップス)

モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番
アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)
指揮:チャールズ・マッケラス
管弦楽:スコットランド室内管弦楽団
(フィリップス)

ベートーヴェン:交響曲第1番
指揮:デイヴィッド・ジンマン
管弦楽:チューリヒ・トーンハレ管弦楽団
(ソニーミュージック)

モーツァルト:歌劇《魔笛》のパパゲーノのアリア
ブリン・ターフェル(バリトン)
指揮:チャールズ・マッケラス
管弦楽:スコットランド室内管弦楽団
アルバム:Tutto MOZART!
(グラモフォン)

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